【前回までのあらすじ】
神の乗り物の名前は「ケトス」っていうらしいよ。
ベロニカちゃんのお葬式があった日の夜。
ラムダのお宿でおねんねしていたルキウスくんは、竪琴の音で目を覚ましました。
なんの音だろう…
スヤァ…
などと二度寝した訳ではないですが、あんまり頭はすっきりしてないみたいです。
あ、いつも聴いてる曲だ、と一度はおめめをしっかり開いて起きたものの
この明らかに眠そうな顔よ…泣き疲れて寝ちゃったとしか思えないんだよなぁ…
生きてる人間が忘れない限り、ベロニカちゃんは生き続けるんだよね。
ベロニカちゃんは強かった…でも、こんな形で強さを知りたかったわけじゃないんだよ。
そうなのか…でも、雨降ってるのに屋根のないところで番をするのは、結構身体に悪いよね…お姉さん達、そんな薄着で風邪引かないようにね…
ルキウスくんがここの里の出身だったら、パパとママに髪を捧げてベリーショートになっていたかもしれませんね…
姉貴…子供だけじゃなく、子犬にも懐かれるのか…流石だ。
姉貴だって眠れないんでしょう…でも、こういう時は目一杯悲しんで泣いていいと思うよ。多分ルキウスくんも、寝るまではボロッボロに泣いてただろうしね。
そうそう、勇者もそれ思ってた。
目を覚ます前から、ずっとセーニャちゃんの十八番が流れてるんだよね。
こうしてベロニカちゃんを失った以上、他のみんなだって、いついなくなるか分からないんだよな…そう思うと、なんだかやっぱ怖いよなぁ。
カミュくんは急にいなくならないでね…
そうだね…でも、おじいちゃんは長生きしてね。
ルキウスくんも長生きするからさ。
あの時のあれは、もうどうしようもなかったよ…おじさんが悪いわけじゃないから、あんまり自分を責めちゃ駄目だよ。
うーん…という事は、ラムダ姉妹が純粋な人間かどうか怪しくなってきましたね…
勿論、構造はしっかり人間だろうけど、一般的な人間の理の中から生まれてきたかは怪しいな…まあ、それで二人に対する印象が変わるかと言われれば、全く何も変わりはしないんですが。
ラムダ姉妹のお家に、前はなかった本が置いてありますね。なんだろう。
ああ…これ、セーニャちゃんやご両親が読んだのか…
お宿の隣のテラスに行くと、セーニャちゃんが竪琴を弾いてました。
死に別れた恋人を愛おしむ曲を、ベロニカちゃんへの手向けに…
セーニャちゃんにとってベロニカちゃんは、姉であり、家族であり、恋人の様に大事な存在だったってことなんですね。
お姉さま…プレイヤーの見ていないところで、そんな死亡フラグ立てるの止めてください…(切実)
ベロニカちゃんは、そんなセーニャちゃんを守るのが好きだったんだろうなぁ…
勿論出来の悪い妹を守るって意味じゃなくて、お互いの足りないところを補い合って守り合うのが好きだったんだろうなぁ…あの日記の内容も、そんな感じですもんね。
ベロニカちゃんツンデレだから、表にはあんまり出さなかったけど。
ここまで泣かずに我慢してたセーニャちゃんでしたが、ここでやっと涙を見せました。
おお…いいよいいよ。謝んなくていいから、いっぱい泣きなさいよ…
どのぐらい泣いていたのかは分かりませんが、落ち着いたセーニャちゃんは気持ちを新たに意気込みます。
待って待って、意気込み過ぎ! ちょっと待って!
なんとセーニャちゃん、あの長くて綺麗な金髪をバッサリ切ってしまいました。
ここで、炎の番をしていたお姉さんのセリフをもう一度。
「葬儀の時に 燭台へと手向ける髪は
命の大樹のもとへ届くことを願い 捧げられる
故人への 最後の贈り物ですわ。
「捧げる髪の長さは 思いの丈の長さ……。
深く愛し合った恋人や 夫婦が死に別れた時は
すっかり 短くしてしまう人もいるそうです。
この断髪はセーニャちゃん自身の決意の証でもあるけど、同時に最愛の姉であるベロニカちゃんへの手向けとして、髪を捧げようとしているんでしょうね…
本当にもう…セーニャちゃんは…もう…
セーニャちゃんは、数々の断髪式イベントの先輩方と同じように、切った髪を風に乗せて飛ばしました。
が、何故かその髪は全て炎で燃え尽きてしまいます。
炎の魔法を使ったわけでもないのに、誰がこんなことを…
その時、何かを訴えるように、ベロニカちゃんの杖が光り出し
セーニャちゃんに向かい、その光が飛んでいきました。
その光は、セーニャちゃんに力を与えるように宿ります。
なんとセーニャちゃん、炎の魔法が使えるようになっていました。
でもこの魔法の使い方、まるでベロニカちゃんのようですね…ってことは、ベロニカちゃんの力なんでしょうね…
セーニャちゃんにも、その力の正体は分かったようです。
ベロニカちゃんはセーニャちゃんの中で生き続けるんだね…
あの不自然に残されてた杖は、ベロニカちゃんがセーニャちゃんの為に残しておいてくれたものだったんでしょうね。
最期まで人の事ばっかり考えてる優しい子だったな…ベロニカちゃん…
そうだね、ルキウスくんも迷わず頑張るよ。
みんなで一緒に、あの二人ぶん殴ろうね。
あったかくて優しくて可愛くて、ちょっとツッコミの厳しい光だったよね。
もう、デレッデレに喜んで光りながら見守ってたよ。
ほんとにいいお姉ちゃんだよな、ベロニカちゃん。
セーニャちゃんの十八番だったよ。
今度は楽しい曲が流れるといいね。
セーニャちゃんが泣き止んだから雨も止んだんだね。
もしくはベロニカちゃんが満足したから晴れたのかな。